私が初めて伊藤若冲を知ったのは大学の美術史の授業でした。
池大雅や円山応挙、与謝蕪村や曽我蕭白、長沢芦雪などと
同時期に京都で活躍した絵師で、
青物問屋に生まれたが、家督も弟に譲り、
生涯絵を描くことだけに没頭した―。
知識としてはこれくらいしかありませんが、
正直な話、そのほかの授業内容をあまり覚えていません。
(先生ごめんなさい)
それぐらい、インパクトが強かったのです。
スライドで前出の絵師たちの作品が映し出されていく中で、
ニワトリの絵に釘付けになったのです。
色彩の鮮やかさ、躍動感溢れる動き、再現性の高い描写、
そして構図、彼のセンスとでも言えばいいんでしょうか。
何もかもが好みでした。
そして、先生の案内で相国寺へ行って、『月夜芭蕉図』を見たのです。
大胆なのだけど、計算された大胆さ、というのが感想でした。
しかしながらその感動と記憶は、毎日の大学生活を送って行く中で
記憶のすみへと追いやられていってしまったのでした。
私と違ってその感動を追い続けた方がいらっしゃいます。
ジョー・プライスさん、エツコ・プライスさん。
すばらしいコレクションを見せてくださってありがとう!
それから、彼らの信念と心意気に本当に敬意を表したいです。
その、心意気のひとつのあらわれが、“照明”です。
「日本美術を鑑賞する際、光の果たす役割は非常に重要である。」
というプライス氏の持論のもと、
自然光のように明暗、白味・黄味に変化する照明が
取り入れられています。
【詳しくはこちら】
これは、非常によかった。
はじめは「(明暗によって)人や動物が動き出しそうに見えるな。
アニメーションのようだな」とか「本当に暗闇に雪が降っているみたい」
などと思っていたのですが、とある作品の前で、ふと龍安寺を思い出し、
「ああ、セミの声を聞きながら、これを(そういう場所で)見て、
畳に転がりたいな」と思いました。
それで「あっ!」と思ったことが。
全てがそうだというわけではないと思いますが(不勉強ですみません)、
「先に飾る場所が決まっていて、その場にふさわしいと思われる絵が描かれた」
事のほうがこの時代には多かったんじゃないかと。
屏風や襖絵なんかはそうですよね。
どんな建物の、どんな部屋で、どうしてこの絵を置いたのか、
どんな風に当時の人は鑑賞していたんだろう。
“絵”としてだけの鑑賞じゃないかもしれない。
金箔に反射する月の光は間接照明にもなるかも―
そんな感想を抱くと同時に、今まで私は、
作品の「切り取られた一部」しか“見て”なかったのか、とも思いました。
そんなことを気づかせてくれた展示手法でした。
若冲の作品はもう、素晴らしいの一言に尽きます。
そして、なんと奇才の人であることかと。
描くものによってなのか、タッチをどんどん別のものへ変えてゆきます。
しかしその中でも特異なのが『鳥獣花木図屏風』。
私は普段、絵画の展示は近くへよってまじまじと見ることをあまりせず、
全体をさらっとっ見る派です。
ですが、これは近寄ってまじまじと見てしまいました。
四角いマスを埋めるように彩色され、
マスの中も色分けされ立体感を出している。
仏教的な側面のある絵画らしいのですが、
色合いと描かれている動物たちによって非常にファンタジックに見えます。
さらに、マスの目がドットのようで、デジタルチック。
非常に斬新でした。
プライス氏の「好き!」で蒐集した作品たちの中には、
私も好きな酒井抱一や河鍋暁斎の作品があったりして
「ちょっと趣味が似てるのかも」とウレシク思ったり。
鈴木其一は知らなかったのですが、
郡鶴図屏風はすごくモダンな感じがして気に入りました。
ただ作品を見て「よかった」だけではなく、
新たな作品の見方の発見もあり、大満足の絵画展でした。
(左)図録。このボリュームで2500円はお得です!
(右)一筆箋 グッズがいっぱいあって目移りしましたが我慢(笑)
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ちなみに、美術史の先生は冷泉為人先生でした。
修復中だった烏丸の公家屋敷にも連れて行ってくださいました。
今思えば貴重な体験でした…
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